金価格の見通し【2026年】
ただ、数字の動きだけを追っていると、全体像がつかみにくく感じることもあります。
今回のコラムでは、これまでの流れを振り返りながら、なぜ今この状況にあるのかを、少し距離を置いて眺めていく内容になっています。
先を言い切るというより、考える材料を整理するつもりで、読み進めてみてください。
金価格は上昇トレンドを形成し、連日で史上最高値を更新してきました。
2026年1月に金先物価格は5,600米ドル台に到達し、日本では現物価格で1gあたり3万円台に乗せたことが話題になりました。
その後、急落の場面があったものの、上昇トレンドの転換には至っていません。
今後の金価格はどのように推移するのか、過去の値動きを振り返りながら詳しく紹介します。
見通しを先にご覧いただくには、見出し「金価格の見通し」をタップしてください。
❖金価格の推移
今後の見通しを考察するために過去の推移を確認し、あわせて価格上昇の理由を解説します。
金価格の長期チャート
1975年以降の金先物長期チャートを見ると、金価格は上下動を繰り返しながら右肩上がりで推移してきた様子がわかります。
チャート内での最初の高騰は、1979年から1980年にかけてです。
理由として、オイルショックや米国のインフレ懸念などが挙げられます。
その後はインフレ鎮静化等を受けて緩やかに下落したものの、2000年代に入ると再び騰勢を強めました。
2008年のリーマンショックやその後の欧州債務危機で、1,900米ドル台に到達しています。
欧州債務危機の沈静化で価格は落ち着き、2023年末以降に再び上昇して現在に至ります。
ここまでを見ると、直近の上昇は非常に急激に映ります。
しかし、「上昇率」という観点で見るとどうでしょうか。
そこで、同じチャートを“対数表示”で確認してみます。
金価格の長期チャート(対数表示)
対数チャートで見ると、1980年前後の上昇率のほうが、2024年以降よりも大きかったことがわかります。
つまり、名目価格のインパクトほど“異常な急騰”というわけではないとも解釈できます。
この視点に立てば、金価格にはなお上昇余地があると判断することも可能です。
金価格の週足チャート
週足チャートを見ると、金価格は2,000米ドルで頭を抑えられてきたことがわかります。
この水準を明確に突破したのは2023年末です。
その後は目立った押し目もなく上昇トレンドが継続し、2026年1月に5,600米ドル台に到達しました。
❖価格上昇の理由
2023年末以降の価格上昇の理由として、複数のポイントが指摘されています。
そのうち、代表的な6点を紹介します。
米ドルの信認低下
基軸通貨としての米ドルの信認低下が指摘されており、資金の逃避先として金が選ばれている模様です。
米ドルの信認低下は米ドルの価値の低下を意味し、資産を守るために米ドルを金に交換する動きが強まると、金価格は上昇しやすくなります。
また、金は主に米ドル建てで取引されています。
米ドルの価値が低下すると他の通貨建てで見た金価格が割安になり、金の需要が増加して価格が高くなりやすいという特徴があります。
新興国による金準備の増加
中国などが金準備を増加中で、この流れは金価格が高騰した後も継続しています。
各国は将来の支払いのために米ドル・ユーロ・金などを保有しており、従来は金よりもユーロの方が多かったのですが、金がユーロを抜いて第2位の準備資産になった模様です。
金は通貨と異なり国家の信用を必要とせず、金であること自体に価値があるとみなされています。
金準備の増加は、米ドルからの脱却を図る動きの一環とも考えられており、この動きは今後も続く可能性があります。
地政学リスクの上昇
地政学リスクとは、特定の地域における政治的・軍事的な緊張の高まりによって、その地域や世界に悪影響を及ぼすリスクです。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や、イスラエルとハマスの軍事衝突などを受けて、安全資産とされる金の需要が高まっていると考えられます。
インフレ懸念
インフレとは通貨価値の低下であり、以前と同じものを買うためにより多くのお金が必要になる状態です。
インフレが進む状態で現金を持っていると、損をします。
金はインフレ時に価格が上昇してきたという実績があり、現金よりも有利な金に資産を移す動きが考えられます。
米国の政策金利の低下
2024年以降、日本を除く主要先進国で政策金利を引き下げる動きが見られ、特に米国の政策金利引き下げが注目されています。
金は金利を生み出さないので、政策金利が高いと金保有の機会費用が高くなります。
しかし、政策金利が低下すれば機会費用は低くなるので、金を買いやすくなるという流れです。
買いが買いを呼ぶ
買いが買いを呼ぶという心理的状態も、無視できません。
価格が上昇するのをただ見ていることで、乗り遅れてしまうという焦りを感じる人が出てきます。
そのような人が金を買うことで、さらに上昇します。
この状態を、しばしばFOMO(Fear of Missing Out、見逃すことへの恐怖)と表現します。
2026年1月の価格急落の理由
2026年1月30日、金価格が急落しました。
トランプ米大統領は次期米連邦準備制度理事会 (FRB)議長としてケビン・ウォーシュ元FRB理事を指名しており、これが価格下落のきっかけとされています。
市場のウォーシュ元FRB理事に対する評価は、利下げに関して前向きであるものの積極的でないという内容が一般的です。
利下げは金価格上昇の一因とされており、ウォーシュ元FRB理事の議長就任で価格上昇要因の一角が崩れる可能性を受けて売りが優勢になったと考えられます。
ただし、ウォーシュ元FRB理事自身は、指名後に政策金利の見通しについて発言していません。
金価格は既に高い水準まで買われており、何かのきっかけで利益確定売りが出やすい相場状況だった模様です。
❖ 金価格の見通し【2026年】
2026年の金価格の見通しについて、ファンダメンタルズ分析とチャート分析の両面で考察します。
この章は、2026年2月中旬時点の情報を基に記述しています。
ファンダメンタルズ分析
今後の金価格が下落するには、見出し「価格上昇の理由」で挙げた諸点の緩和や改善が必要です。
・新興国による金準備の増加停止
・地政学リスクの緩和
・インフレ懸念の解消
・米国の政策金利の低下が止まる
・買いが買いを呼ぶ心理状態の解消
すべてが同時に実現する必要はなく、1点でも実現すれば、その分だけ価格上昇圧力が弱くなると考えられます。
6点のうち、直近で期待できるものとして米国の政策金利が挙げられます。
1月末の金価格急落は政策金利見通しの変化を受けてもたらされたと考えられ、ウォーシュ元FRB理事がどのような発言をするか、関心が集まっています。
また、買いが買いを呼ぶ心理状態について、既に解消した可能性があります。
1月の急落は市場参加者にある程度の恐怖を植え付けたと想定でき、今までと同様の急上昇は再現しない可能性があります。
ただし、可能性にすぎないので、実際の動向を注視しましょう。
その他の事項については、予見可能な短期間での実現は難しいのが現状です。
ファンダメンタルズ分析の観点からは、金価格の下落要因が乏しいと判断可能です。
チャート分析
ローソク足チャートを見ると、直近で大きく乱高下したものの上昇トレンドに明確な変化はありません。
週足のローソク足チャートに、青の線(サポートライン)を2本追加しました。
サポートラインは4,000米ドルと3,500米ドルで、何らかの理由で価格が下落に転じるときの目安になります。
5,600ドルを起点とすると、4,000米ドルまで戻れば28.6%の下落、3,500ドルなら37.5%の下落です。
実際に下落するかどうかわからないものの、チャート分析上ではありうるという数字です。
金価格の上昇を狙って買っている場合、下落に備えたリスク管理も重要です。
まとめ:金価格の見通し
金価格は上下動を繰り返しながら右肩上がりで推移し、2024年以降は上昇が特に顕著です。
価格上昇理由として複数の点が指摘されており、執筆時点で得られる情報を基に考えると、予見可能な未来において上昇トレンドは続く可能性があります。
その一方、1月の急落を契機として、トレンドに変化が生じた可能性を否定できません。
価格がどのように変化しても大丈夫なように、資金管理を確実に実行すべきと言えます。
また、金貨(アンティークコイン)に投資したい場合、金価格の推移は重要なポイントの一つで、アンティークコインの価格変動と金価格の関係を知っておくことが重要です。
記事「アンティークコインの価格は上がるか?金や株価との長期比較」でアンティークコインと金価格を比較していますので、ご確認ください。
上昇が続く局面でも、別の見方や備えの視点があることに、あらためて気づかされます。
金や金貨を見るとき、今の価格だけでなく、その背景にある流れを静かに思い返してみると、判断の軸も少し変わってくるかもしれません。
数字の向こう側にあるものを意識する、そんな余韻が残る内容でした。



