金価格の見通し【2026年9月版】史上最高値から急落、8月の急反発、そして今後は

金価格の見通し【2026年9月版】史上最高値から急落、8月の急反発、そして今後は


このコラムを3行でまとめると...
  • 2026年の金価格は史上最高値から急落後に反発しており、長期チャートと年初からの値動きから現在の相場を整理します。
  • 中央銀行の金購入・米ドルの信認・地政学リスク・インフレ・米政策金利など、金価格を動かす主な要因を解説します。
  • 2026年後半から2027年の金価格について、為替の影響や主要機関の予測を踏まえ、上昇・横ばい・下落の3シナリオで見通します。



金価格は2026年1月28日に1トロイオンス5,589米ドルの史上最高値を付けたあと、6月下旬には一時4,000米ドルを割り込むまで値下がりしました。

その後、8月には米国の財政不安とドル安を背景に1カ月で13%を超える急反発を見せ、9月上旬は4,300~4,500米ドル前後で推移しています。

日本国内の店頭小売価格も、3月3日に1gあたり29,969円の最高値を付けたあと、8月上旬には22,000円台まで下がり、9月10日時点では24,063円まで戻しています。

本コラムでは、長期の値動きと上昇の理由を振り返ったうえで、主なトピックと2026年後半から2027年にかけての見通しを解説します。


柴田充輝
この記事の執筆者: 柴田充輝 (しばたみつき)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士


目次 ― CONTENTS



今後の見通しを考察するために過去の推移を確認し、あわせて価格上昇の理由を解説します。


金価格の長期チャート

次のグラフは、田中貴金属の年次金価格をもとに1973年から2026年8月までのドル建て金価格(1トロイオンスあたり)を描いたものです。1973~2025年は各年の平均、2026年は月平均なので、一時的な高値・安値は平均の中に埋もれて見えにくい点に注意してください。


(市場公開資料を元にPRIME MINTにて作成)

50年あまりの流れを大きく見ると、金価格は「長い停滞」と「短い急騰」を交互に繰り返しながら、水準を切り上げてきたことがわかります。

最初の山は1980年です。1970年代の2度の石油危機で米国のインフレ率(物価の上昇率)が年10%を超え、通貨の価値が目減りするのを避けたい資金が金に向かいました。年平均でも600ドル台、1980年1月には一時850ドル前後まで買われています。

その後、FRB(米国の中央銀行)が金利を大幅に引き上げてインフレを抑え込むと金は長い下り坂に入り、1999~2001年には250ドル台まで沈みました。高値から安値まで約20年かかった計算で、金が「持っていれば必ず上がる資産」ではないことを示す時期です。

2つ目の山は2011年です。2000年代に入ると、証券取引所で株式と同じように売買できる金ETF(上場投資信託)が登場し、個人も金を買いやすくなりました。2008年のリーマンショック後は、各国が金利を下げて世の中に出回るお金を増やす「金融緩和」を大規模に進めたことも追い風になりました。欧州債務危機のさなかの2011年9月には1,900ドル台を付けています。

2013年から2019年はおおむね1,100~1,400ドルの横ばいが続き、2020年のコロナ禍でようやく2,000ドルに到達しました。

そして3つ目の山が現在です。グラフの吹き出しにあるとおり、2023年以降は中央銀行の金購入や地政学リスク(戦争や紛争など国際情勢の緊張)、米国の利下げという3つの追い風が重なり、2年あまりで価格は2倍以上になりました。2026年1月の月平均は5,000ドル前後、8月の月平均は4,409.90ドルです。

グラフの右端が急角度で立ち上がっているため、今回の上昇は過去に例のない急騰に見えます。ただし普通のグラフでは、1,000ドルから2,000ドルへ上がる場合も、2,500ドルから5,000ドルへ上がる場合も同じ2倍の上昇であるにもかかわらず、価格水準が高い後者ほど変動が大きく見えてしまいます。

そこで、同じ値動きを対数目盛りのグラフで確認してみます。対数目盛りとは、価格の「金額」ではなく「何倍になったか」が同じ幅に見えるよう縦軸を工夫した目盛りです。このグラフでは、先ほどの2つの上昇はどちらも同じ高さで描かれます。


金価格の長期チャート(対数表示)

(チャート引用元:TradingView)

上のチャートは米国の商品取引所COMEX(コメックス)で取引される金の先物価格を、1カ月単位(月足)・対数目盛りで描いたもので、1975年から2026年9月までを表示しています。上に行くほど目盛りの間隔が詰まって見えるのは、対数表示の特徴です。

この目盛りで見ると、1976年の安値100ドル強から1980年の850ドルまでの上昇は約8倍、2001年の255ドル前後から2011年の1,900ドル台までは約7.5倍でした。これに対し、2023年末の2,000ドル台から2026年1月の5,600ドル近辺までは約2.8倍です。

つまり倍率で比べると、直近の上昇は1970年代後半や2000年代よりむしろ穏やかで、ドル建ての金額の大きさほど「異常な急騰」ではないという見方が成り立ちます。

同時に、1980年と2011年の山のあとには、いずれも数年から20年に及ぶ、価格が下がったり伸び悩んだりする期間(調整期間)があったこともチャートは示しています。2026年前半の下落も、大きく上がったあとによく見られる値下がりの一つと考えれば、過去の範囲内といえるでしょう。


金価格の週足チャート

(チャート引用元:TradingView)

上のチャートは、同じCOMEXの金先物価格を1週間単位(週足)で描いたもので、2023年後半から2026年9月上旬までを表示しています。1本の「ローソク足」は、1週間の最初の価格(始値)・最も高い価格(高値)・最も安い価格(安値)・最後の価格(終値)をまとめた図形です。下段の棒グラフは、週ごとの取引量(出来高)を表しています。

2023年末まで2,000ドル前後で足踏みしていた金は、2024年3月にこの節目をはっきりと上回りました。以後は大きく値下がりする場面がほとんどないまま、2024年末に2,600ドル台、2025年前半に3,000ドル台へと階段を上るように値上がりしています。

2025年秋には取引量が増えるなかで4,000ドル台に乗せ、年末にかけて4,000~4,400ドルで一進一退を続けたあと、2026年1月に5,600ドル台まで一気に駆け上がりました。この週のローソク足から上に長い線(上ヒゲ)が伸びているのは、週の途中で大きく値上がりしたものの、その後急落して押し戻されたことを表しています。

その後は6月から7月にかけて4,000ドル付近まで下げましたが、4,000ドルを少し割り込むたびに買い戻され、ローソク足の下に長い線(下ヒゲ)が残りました。4,000ドルを下回ると買いたい人が多かったことを示す形です。8月は一転して値上がりの週(陽線)が続き、4,750ドル近辺まで急反発しています。

このチャートから、9月上旬時点では4,450ドル前後まで値を戻していることがわかります。ただし、1月の高値(5,600ドル台)にはまだ届いていません。急落後に反発してはいるものの、本格的に回復したとはいえない段階です。



❖金価格上昇の理由

2023年末から2026年1月までの上昇には、単独の理由ではなく複数の追い風が重なっていました。ここでは代表的な6つの理由について、2026年前半の値下がり局面でどう変化したかとあわせて整理します。


米ドルの信認低下

米ドルは、各国が万一に備えて保有する外貨準備(外国の通貨や金などの資産)の中心です。しかし、財政赤字の拡大や政治的な圧力を背景に、その信頼が揺らいでいると指摘されます。準備資産を米ドルだけに頼ることを避けたい国や機関にとって、特定の国の信用に依存しない金は代替先になりやすい資産です。

実際、欧州中央銀行(ECB)の2025年の報告によると、2024年時点で世界の国々が持つ準備資産に占める金の比率は20%となり、ユーロの16%を上回って米ドルに次ぐ第2位の準備資産になりました。

金の国際価格は米ドルで決まるため、ドルの価値が下がると、ほかの通貨を持つ人から見て金が割安になり、買われやすくなります。2026年8月に米国の政府債務が40兆ドルを超え、ドルが下落した局面で金が急伸したのは、この構図が典型的に表れた例です。

出典:CNBC「Gold is now the world's second-largest reserve asset」


中央銀行による金準備の増加

中央銀行の金購入は、この数年の金相場を語るうえで欠かせない要素です。WGC(World Gold Council:金市場の調査・分析を行う国際団体)によると、世界の中央銀行は2022年以降、年平均でおよそ1,000トンの金を買い増しています。これは2010年代の平均の約2倍です。

2026年に入ると1~3月期の購入は57トンに減速しましたが、4~6月期には289トンへ急回復し、第2四半期としては過去最大となりました。ポーランド中央銀行が51トン(保有目標700トンに向けて積み増し中)、中国人民銀行が33トンと、価格が下落する局面でむしろ買いを増やした点が特徴です。

WGCの調査では、各国の中央銀行で準備資産を運用する担当者の45%が「今後1年で自国の金保有を増やす」と回答しています。中央銀行は、投資家のように短期の値動きで方針を変えないのが一般的です。そのため、金価格が下がったときに買い支える、息の長い需要と考えられます。

出典:World Gold Council


地政学リスクの上昇

地政学リスクとは、特定地域の政治・軍事的な緊張が、その地域や世界経済に悪影響を及ぼす可能性のことです。株式や通貨と異なり、金は発行体の信用に依存しないため、有事の際に資金の避難先として選ばれてきました。

2022年からのロシアによるウクライナ侵攻に続き、2026年は2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃とホルムズ海峡の封鎖が金価格を大きく動かしました。

ただし、この局面では「原油の値上がり→物価の上昇(インフレ)→利上げの予想」という流れで金が売られる場面もあり、地政学リスクが常に買い材料になるわけではないことも明らかになっています。


インフレ懸念

インフレとは物価が継続的に上がり、同じ金額で買えるものが減っていく状態、いいかえれば通貨の価値が下がる状態です。現金や預金はインフレの分だけ実質的に目減りするため、実物資産である金に資金を移す動きが生まれます。

金価格を考えるうえで重要なのは「実質金利」です。実質金利とは、預金などの金利(名目金利)から物価の上昇率を差し引いたもので、お金の価値が実際にどれだけ増えるかを表します。たとえば金利が1%でも物価が3%上がれば、実質金利はマイナス2%です。実質金利が低い、あるいはマイナスのときは、利息がつかない金を持つデメリットが小さくなり、金が買われやすくなります。

2026年は、原油高によるインフレが「FRBは利下げできない、むしろ利上げもあり得る」という見方を強めました。その結果、金利が上がり、金価格を押し下げる要因になっています。インフレそのものは金にとって追い風ですが、インフレが金利の上昇を招くと逆風に変わる点は、ここ数カ月の相場が示した教訓です。


米国の政策金利の動向

金は利息や配当を生まないため、金利が高いほど「金を持つために得られなくなる利息」、つまり機会費用(ほかの選択をしていれば得られたはずの利益)が大きくなります。逆に利下げ局面では、この機会費用が縮小して金が買われやすくなります。

FRBは2025年9月から12月にかけて3回続けて利下げを行い、政策金利を3.50~3.75%まで引き下げました。この利下げが2025年後半から2026年1月にかけての急騰を後押しした面があります。

しかし2026年は、この前提が崩れました。ウォーシュ新議長のもとでFRBは6月と7月の会合で金利を据え置き、7月の会合では3人の委員が利上げを主張しています。「利下げが続く」という予想が「利上げもあり得る」という予想に変わったことが、上半期の金価格を強く押し下げた要因です。

出典:FRB 「Federal Reserve issues FOMC statement」


買いが買いを呼ぶ

価格が上がり続けると、「今買わなければ乗り遅れる」という焦りから参加者が増え、その買いがさらに価格を押し上げます。この心理をFOMO(Fear of Missing Out:見逃すことへの恐怖)と呼び、値上がりの最終盤によく見られる現象です。

現在では、この動きが金ETF(上場投資信託)に出入りする資金として数字に表れます。2026年1月の急落でいったん冷え込んだ投資熱は、8月の急反発で再燃し、世界の金ETFには1カ月で約180億ドルが流入しました。

ただし、こうした資金は入るときも出るときも速く、価格の振れ幅を大きくします。上昇局面では追い風、値下がりに転じた局面では下落を加速させる「両刃の剣」といえるでしょう。



❖2026年1月の価格急落の理由

2026年1月30日、金価格は1日で約9%下落し、史上最高値の5,600ドル近辺から4,900ドル前後まで急落しました。1日の下落率としては1980年代前半以来の大きさで、同じ日に銀は30%超の暴落となっています。

きっかけは、トランプ米大統領が次期FRB議長にケビン・ウォーシュ元FRB理事を指名したことです。ウォーシュ氏は、物価を抑えるために金利を高めに保つことを重視する「タカ派」と見られており、市場は「利下げの追い風が弱まる」と受け止めました。

とはいえ、指名のニュースだけでこれほど大きく下げたわけではありません。金は年初から1カ月足らずで2割以上上昇しており、値上がりしたところで売って利益を確保する「利益確定売り」のきっかけを待つ状態でした。そこに指名の報道が重なり、売りがさらに売りを呼んだと考えられます。

振り返ると、この日が2026年前半の値下がり局面の出発点でした。値上がりを見込んで金を買っていた投資家が、その後半年をかけて少しずつ売っていくことになります。

出典:CNBC「Silver plunges 30% in worst day since 1980, gold tumbles as Warsh pick eases Fed independence fear」



❖2026年2月~9月の金価格トピック

本コラム初出(2月12日)以降に起きた主な出来事を、時系列で整理します。まず全体像を表にまとめています。

時期 主な出来事 金価格への影響
2月28日~3月上旬 米国・イスラエルがイランを攻撃、ホルムズ海峡が事実上の封鎖 安全資産需要で急騰。国内小売価格は3月3日に29,969円の最高値
3月中旬~下旬 原油高でインフレ・利上げ観測、利益確定売り、金ETFから資金流出 下落に転換。国内は24,000円台まで急落
4月7日 米国とイランが2週間の停戦で合意、ホルムズ海峡の通航再開 紛争への不安で上乗せされていた分がはげ落ち、値上がりしにくい展開
5月13日・22日 ウォーシュ氏が上院で承認され、FRB議長に就任 タカ派(利上げに前向き)とされる議長への警戒が強まる
6月17日 ウォーシュ議長初のFOMC。金利据え置き、今後の金利の方針を前もって示すのをやめる 利下げ期待が消え、6月下旬に4,000ドル割れ
6月中旬 米国とイランが戦闘終結の合意文書に署名 安全資産需要がさらに後退
7月29日~31日 FOMCで3人が利上げを主張。日米が28年ぶりの協調円買い介入 円高で国内価格は23,000円前後まで下落
8月18日~25日 米政府債務が40兆ドル突破、米財務省が国債買い戻しの拡大を発表 ドル安と財政不安で急反発。月間13.3%高、一時4,700ドル台
8月28日 ジャクソンホール会議でウォーシュ議長がタカ派発言 9月の利上げ予想が5割超に高まり、値下がり


3月:中東情勢の急変で国内価格が最高値を更新

2月28日、米国とイスラエルがイランを空爆し、イラン当局はホルムズ海峡の封鎖を宣言しました。ホルムズ海峡は世界の石油消費量の約2割が通過する要衝で、原油価格は攻撃前より1割ほど高い水準に上昇しています。

安全資産としての金には資金が集まり、田中貴金属の店頭小売価格は3月3日に1gあたり29,969円と、1月29日の29,815円を上回る最高値を付けました。ドル建ての最高値は1月28日でしたが、円建ての最高値は3月上旬です。この差は、当時の円安が円建て価格を押し上げていたためです。

しかし3月中旬以降は流れが変わります。原油高がインフレ懸念を強め、「FRBは利下げできない」という見方が金利上昇圧力を生みました。

金利上昇だけでなく、最高値付近で利益を確保するための売りと、金ETFからの資金流出も重なり、国内価格は3月24日に24,777円まで下落しました。「紛争が起きると金が買われる」というのが一般的な見方です。しかし原油高からインフレ、金利上昇へと影響が広がると、逆に金が売られる理由にもなることを示した1カ月でした。

出典:日本総合研究所「イラン情勢を踏まえ、今後の原油価格をどうみるか」


4月~6月:停戦とFRB新体制で上値の重い展開

4月7日、米国とイランは2週間の停戦で合意し、イランはホルムズ海峡の安全な通航を認めました。停戦は延長を重ね、6月中旬には停戦の60日延長とホルムズ海峡の再開、核協議の開始を盛り込んだ覚書(MOU)に両国が署名しました。

ただし、この合意は最終的な和平ではなく交渉期間を定めたもので、7月上旬にはイランが指定航路を外れた商船を攻撃し、戦闘が再開しました。以後も米イラン間の衝突は断続的に続いており、原油高を通じたインフレ懸念として金相場に影響し続けています。

並行して、金融政策の主役が交代しました。ウォーシュ氏は5月13日に上院で承認され、5月22日に第17代FRB議長に就任しています。

議長として初めて臨んだ6月17日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利を3.50~3.75%に据え置きました。声明では「インフレは2%目標に対して高止まりしている」「委員会は物価の安定を実現する」と明記され、利下げの示唆は見られません。

さらにウォーシュ議長は、FRB幹部が今後の金利予想を点で示す図(ドットプロット)に自分の予想を書き込まず、今後の金融政策の方向性を前もって示す「フォワードガイダンス」もやめています。

市場で広がっていた利下げへの期待は消え、金は6月下旬に一時4,000米ドルを割り込みました。2025年11月以来の水準です。

出典:ジェトロ「米国がイランと2週間の停戦合意、イランは「ホルムズ海峡の安全な通航」承認」
出典:FRB「Kevin Warsh takes oath of office as chairman and a member of the Board of Governors of the Federal Reserve System, and the Federal Open Market Committee unanimously selects Warsh as its chairman」
出典:FRB「Federal Reserve issues FOMC statement」


7月:3人の利上げ派と、日米協調介入による円高

7月は中東情勢が再び悪化した月でもあります。停戦合意は7月8日に崩れ、ホルムズ海峡をめぐる緊張が続きました。ただし3月と同様、この局面でも金は安全資産として買われるより、原油高がインフレや利上げの予想を呼んで売られる場面が目立ちました。

7月29日のFOMCも据え置きでしたが、採決は9対3に割れ、3人の委員が0.25%の利上げを主張しました。

「利下げがない」どころか「利上げがあり得る」局面に変わり、ドル建て金価格は4,100~4,200米ドル前後で低迷しました。

日本の投資家にとって見逃せないのが為替です。7月末に円相場は1米ドル=164円に迫り、約40年ぶりの円安水準となりました。これを受けて7月30日に日本が単独で、31日には日米が協調して円買い介入を実施しました。円買いの協調介入は1998年以来、28年ぶりです。

円高になると、ドル建ての金価格が同じでも、円に換算した金額は小さくなります。国内の店頭小売価格は7月に23,000円台で推移し、8月上旬には22,000円台まで下がりました。

出典:FRB「Federal Reserve issues FOMC statement」


8月:政府債務40兆ドルとドル安で1カ月13%の急反発

8月18日、米国の政府債務残高が初めて40兆ドルを超えました。10年前の約2倍で、想定より数カ月早い到達です。

翌19日、米財務省は、発行済みの長期国債を満期前に買い戻す規模を1回あたり20億ドルから40億ドル以上へ倍増させると発表しました。市場はこれを「財政悪化による国債市場の混乱を抑え込もうとする動き」と受け止め、ドルが下落しました。ドル安は金の追い風です。

WGCによると、8月の金は13.3%上昇して4,563米ドルで月を終え、過去25年で3番目に大きな月間上昇率を記録しました。世界の金ETFには月間で約180億ドルが流入し、保有残高は4,189トンと過去最高です。

国内小売価格も8月25日に26,525円まで戻し、8月上旬の安値から約16%上昇しています。
ただし8月28日、ウォーシュ議長はジャクソンホール会議でインフレを2%に戻す姿勢を強調し、金は反落しました。9月上旬時点で、金融市場の取引から計算される、9月16日のFOMCでの利上げ確率は5割を超えています。

出典:CNBC「U.S. government debt passes $40 trillion, more than doubling in a decade」
出典:World Gold Council「Gold Market Commentary: Paved with good interventions」
出典:FRB「In Our Time」



❖円建て金価格はどう決まるか

日本で目にする1gあたりの金価格は、おおむね次の式で決まります。

円建て金価格(円/g)=ドル建て金価格(ドル/トロイオンス)÷31.1035×為替レート(円/ドル)+手数料等

1トロイオンスは、国際的な金の取引に使われる重さの単位で、グラムに換算すると31.1035gです。つまり円建て価格は、「金そのものの値動き」と「ドル円の値動き」の掛け算です。2026年の場合、1月から6月にかけてドル建て金価格は約28%下落しましたが、円安が進んだため円建ての下落率はそれより小さくなりました。

逆に7月末の協調介入で円高に振れた局面では、ドル建て価格が横ばいでも円建て価格は下がっています。

9月17~18日には日本銀行の金融政策決定会合が予定され、利上げ観測が高まっています。日本の金利が上がると円が買われて円高になりやすく、円建ての金価格は下がりやすくなります。金を円で保有する日本の投資家は、金価格だけでなく、日米の金利の動きにも目を配る必要があります。



❖金価格の見通し【2026年後半~2027年】

2026年後半から2027年にかけての金価格の見通しについて、経済や需要と供給の状況から考える「ファンダメンタルズ分析」と、過去の値動きのグラフから考える「チャート分析」の両面で考察します。


ファンダメンタルズ分析

2月時点で挙げた6つの上昇要因を、9月時点の状況で点検すると次のようになります。

要因 2月時点 9月時点 金価格への作用
米ドルの信認 低下傾向 債務40兆ドル突破でさらに低下 上昇要因として強まる
中央銀行の金購入 継続 4~6月期は過去最大の289トン 値下がり時の支えになる
地政学リスク 高い 米イラン合意で一服、ただし再燃リスクは残る 値上がり要因としては弱まる
インフレ懸念 あり エネルギー主導で高止まり 利上げを招けば値下がり要因
米政策金利 利下げ期待 利上げ観測が5割超 最大の下落要因
買いが買いを呼ぶ心理 1月急落で後退 8月のETF流入で再燃 値動きを大きくする

最大の焦点は、やはり米国の政策金利です。2月時点では「利下げが止まるかどうか」が論点でしたが、9月時点では「利上げが何回あるか」に論点が移りました。9月16日のFOMCで利上げが決まれば、短期的には金価格が下がりやすくなると考えられます。

ただし、8月の相場が示したように、利上げ観測があっても財政不安とドル安が勝れば金は上がります。ウォーシュ議長は物価安定を最優先に掲げていますが、40兆ドルの債務を抱える政府にとって、高金利は利払い負担の増加を意味します。

米国では、 「物価を抑えるための高い金利」と「国の借金の利払いを抑えるための低い金利」の綱引きは、2027年にかけても続く構造的なテーマです。この綱引きが続く限り、金への関心は簡単には消えないと考えられます。

ファンダメンタルズの観点から整理すると、短期的には米国の利上げによって金価格は下がりやすい状況です。ただし、値下がりすると中央銀行などが買いを入れるため、大きく下がり続ける可能性は低く、中長期では再び上昇に転じる余地もあるというのが9月時点の見方です。


チャート分析

(チャート引用元:TradingView)

週足チャートで、2026年の値動きを改めて確認します。1月の最高値が5,600ドル台、6~7月の安値が4,000ドルをわずかに下回る水準、8月の反発で付けた高値が4,750ドル近辺、直近が4,450ドル前後です。

値上がりしても売りが出やすい水準としては、8月高値の4,750ドル前後と、キリのよい5,000ドルがあります。8月の急反発が4,750ドル手前で止まり、9月に入って値下がりしていることから、当面はこの水準を超えにくいと考えられます。

したがって当面は、4,000~4,750ドルの範囲で上がったり下がったりする展開を想定し、この範囲をどちらに抜け出すかを見極めるのが現実的です。

なお、WGCは3,860ドルを割り込むと、過去の値動きの傾向から見て、さらに値下がりが進む可能性があると指摘しています。その場合、3,500ドル程度が目安になるでしょう。

出典:World Gold Council「Gold Mid-Year Outlook 2026: Point break」


主要機関の見通しと3つのシナリオ

主要機関は、2026年6~7月にかけて相次いで年末見通しを引き下げました。短期的には米金利に左右されるという見方でおおむね一致していますが、どこまで下がるかの目安や、中央銀行の金購入の見方には差があります。

機関 見通し 主な根拠
WGC(2026年後半) 基本は4,100米ドル±5%、上振れなら4,500米ドル超 金利の先行きが利下げ方向に変わることや景気悪化が、上振れの条件
ゴールドマン・サックス(2026年末) 4,900米ドル(6月に5,400米ドルから引き下げ) 利下げ期待の消滅を反映
JPモルガン(2026年10~12月期) 4,500米ドル(7月に約6,000米ドルから引き下げ。7~9月期平均は4,300米ドル) ETF・中央銀行需要の鈍化と、実質金利の影響を受けやすくなったことを反映。中長期の強気姿勢は維持
(各社レポートおよび報道より。2026年6~9月時点)

これらを踏まえ、PRIME MINTでは2027年にかけての展開を3つのシナリオで整理しています。

基本シナリオ(横ばい圏):米国は年内に1~2回利上げするものの、財政不安と中央銀行の買いが支えとなって大きくは下がらず、4,000~5,000米ドルの範囲で上下する。

上振れシナリオ(値上がり):利上げが景気を冷やし、2027年に利下げへ転換する。ドル安と投資資金の流入が重なり、再び1月高値の5,500米ドル台まで上昇する。

下振れシナリオ(値下がり):インフレが収まらず利上げが続き、ドル高と株高で安全資産の需要が薄れる。3,860米ドルを割り込み、3,500米ドル前後まで下落する。

これらのシナリオを国内の店頭小売価格に置き換えると、1gあたりの目安は基本シナリオで約2.2万~2.7万円、上振れシナリオで約3万円、下振れシナリオで約1.9万円です。9月10日時点の国内価格(24,063円)とドル建て価格(4,450米ドル前後)の比率から、為替が変わらないと仮定して計算しました。

ただし、日銀の利上げで円高が進めば、国内価格はこの目安より低くなりやすい点に注意が必要です。金価格の上昇を狙って買う場合も、資産防衛として持つ場合も、下落に備えた資金管理が重要であることに変わりはありません。



❖金価格に関するよくある質問

金価格は今が買い時ですか?

1月の最高値から2割ほど下がった水準にあり、中央銀行の買いという下支えもあります。一方で、9月以降は米国の利上げが値下がりの要因になり得ます。一度に買うのではなく、時期を分けて購入する方法が、値動きの大きい相場では有効です。


円建ての金価格が3万円を超えることはありますか?

3月3日の最高値は29,969円で、3万円目前まで迫りました。ドル建て価格が5,500米ドル台に戻り、かつ円相場が1米ドル=160円台であれば、税込みの店頭価格は計算上3万円を超えます。

ただし、日銀の利上げで円高が進めば、ドル建て価格が上がっても円建てでは伸び悩む可能性があります。


金貨(アンティークコイン)の価格も金価格と同じように動きますか?

アンティークコインの価格は、金の地金価値に、希少性・デザイン・保存状態などを反映したコレクターズプレミアム(収集家からの人気による上乗せ分)が加わって決まります。プレミアムが価格の中心を占める希少なコインや人気のコインは、金価格が短期的に上下しても、販売価格やオークション相場まで連動して動くものではありません。

ただし、アンティークコインのなかでも地金価値に対してプレミアムの割合が小さいコインは、金相場の影響を受けやすくなります。ご検討中のコインが金価格の影響をどの程度受けるかについては、個別にご案内いたしますので、お気軽にお問い合わせください。


金価格について、初心者でも簡単に学べる方法はありますか?

実物資産として金を検討したいものの、「なぜ金価格が上がったり下がったりするのか、よくわからない」という方は意外と多くいらっしゃいます。

金価格が動く背景には、米国の金利や為替、世界情勢、中央銀行の動きなど、さまざまな要因が関係しているため、初めて学ぶ方にとっては少し難しく感じる部分もあるかもしれません。

PRIME MINTでは以前、私立小学校の6年生に、金融リテラシーのひとつとして「なぜ金の価格は上がるのか?」をテーマにお話しする機会がありました。
金利や為替、世界情勢といった少し難しい内容でしたが、身近な例やイラストを取り入れた資料を使って説明したところ、小学生の皆さんも楽しみながら理解してくれました。

今回、その資料を一般向けに再編集した「小学生でもわかる!なんで金って高くなってるの?」を、公式LINEから無料でプレゼントしています。
ご自身でお読みいただくのはもちろん、お子さんやお孫さんと一緒に楽しみながら学べる内容ですので、ぜひご活用ください。

PRIME MINT公式LINEを友だち追加後、
トーク画面で「金価格」と送信してください。




❖まとめ:金価格の見通し

2026年の金相場は、1月の史上最高値から6月までの約28%の下落、8月の急反発と、わずか8カ月で山と谷を経験しました。値動きの背後には、中東情勢・FRB議長の交代と利上げ観測・日米の為替介入・米国の財政不安という4つの大きな出来事があります。

9月時点のPRIME MINTの見立ては、「短期的には米国の利上げで金価格が下がる場面もあるが、大きく下がり続ける可能性は低い」というものです。中央銀行の買いや米国の財政不安が、値下がりの歯止めになると考えられるためです。実際に、2月に下値の目安として示した4,000ドル付近で、6月に値下がりが止まったことも、この見方を支える材料といえます。

未来の金価格が実際にどう動くのかは、もちろん誰にもわかりません。今回お伝えしたのは、あくまで現時点での材料をもとにしたPRIME MINTの見立てです。

解説したように、金価格が動く背景には、金利や為替、国際情勢、中央銀行の動きなど、いくつかの大きな要因があります。これらが今後どのように動き、それによって金価格がどう反応するのか。皆さんもそれぞれのシナリオを考えながら金相場を見てみると、これまでとは少し違った面白さが見えてくるのではないでしょうか。

PRIME MINTでは、今後も3ヶ月ごとに金相場の見通しを更新していく予定です。次回は今回の見立てが実際にどうだったのかも振り返りながら、その時点での金相場を改めて考えていきます。3ヶ月後も、過去の振り返りと将来の予測にお役立てください。




 

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