アンティークコインの価格は上がるか?金や株価との長期比較
今回は、具体的なコインをひとつ取り上げながら、金や株式と並べて眺めてみる内容になっています。
数字を追うというよりも、アンティークコインがどんな性質を持った存在なのかを、ゆっくり考えるきっかけになりそうです。
そんな気持ちで、読み進めてみてください。
アンティークコインは昔から注目を集めており、近年は特にその傾向が強いです。
では、アンティークコインの価格は本当に上昇していて、さらに、金や株式と比較して有利と言えるでしょうか。
有名なアンティークコインを例にして比較します。
❖アン女王の5ギニー金貨
アンティークコインの代表例として今回使うのは、アン女王の5ギニー金貨です。
アン女王はイングランドの女王です(在位:1702-1714)。
1707年にイングランドとスコットランドが統合してグレートブリテン王国が誕生すると、その初代君主となりました。アン女王は17人の子を授かりましたが、いずれも成人に達することはなく、後継者を残せなかった悲運の女王としても知られています。
イギリス アン (1702-1714) 5ギニー金貨(画像出典:日本コインオークション)
❖価格推移の比較
3つの価格推移を比較します。
・金価格
・TOPIX(東証株価指数)
5ギニー金貨の価格は、イギリスコインの専門書籍『Coins of England & The United Kingdom』に掲載された数字を採用しています。
1989年以降の価格推移
上のグラフは、おおよそ5年ごとの価格推移を示したもので、1989年の価格を1とした場合の変化を表しています。
5ギニー金貨は大きく上昇し、2024年時点では価格が約20倍に達しています。
金も上昇基調にありますが、その伸びは5ギニー金貨には及びません。
TOPIXは1989年のバブル期高値を上回ることなく、相対的に低い水準で推移しています。
アン女王の5ギニー金貨と金価格を比べた場合、金よりも5ギニーを買ったほうが良いのは明らかです。
しかし、金を買っていたとしても満足できるでしょう。
価格上昇により含み益となっており、さらに良い投資対象を求めるとキリがありません。
TOPIXなど日本株関連を買っていた場合は、株価が上がらず苦しい展開でした。
金や株価の価格低迷時はどうだったのか
投資を考える際、価格上昇について検討するのは重要ですが、価格下落についての検討も同様に重要です。
相場は上がったり下がったりするので、下落が大きすぎると厳しい状態に追い込まれるかもしれないからです。
そこで、バブル崩壊からリーマンショック後の期間に絞って、グラフを再掲します。
TOPIXは1989年高値を頂点として下落トレンドでした。
2008年のリーマンショックでさらに下落してしまい、2010年時点の株価は1989年と比較して大きく低迷しています。
金価格を見ると、2000年までは下落したものの、そこから緩やかに上昇しています。
リーマンショック前後に価格が大きく上昇しました。
アン女王の5ギニー金貨も下落しましたが、金やTOPIXに比べて小さな下落幅にとどまっています。
円高の間も英ポンド建て価格は維持または上昇しており、下落は円高を反映したものです。
ポンド建て価格の上昇を反映して、2000年には早くも円建て価格が上昇に転じました。
その後は、リーマンショックなどでさらに価格が上昇するという展開が続いています。
現実の取引価格は下がりづらい
数字の上では、アン女王の5ギニー金貨の価格は下落の場面がありました。
しかし、現実の取引価格はとても下がりづらいことが知られています。
コインの希少性が高いからです。
アンティークコインは一般の商品や株式と異なり、十分なお金があっても買えるとは限りません。
誰かが手元のコインを売りに出したときだけ、購入のチャンスがあります。
ところが、アン女王の5ギニー金貨は貴重品なので、売りたい人は多くありません。
また、昔のコインは再生産できないので、紛失や火事などによって現存枚数は減る一方です。
仮に再生産しても、それはレプリカであって当時の金貨とは別物です。
時間が経過すればするほど、自動的に希少価値が上昇するという特徴を持っています。
貴重なコインが市場に出てくると購入希望者が集まるので、下落余地は乏しくなります。
株式や不動産などが下落していても、貴重なコインはなぜか下がらないという現象が発生することになります。
不況時の価格上昇
貴重なコインの価格は下落しづらいという特徴が顕著に現れたのは、2008年のリーマンショック前後です。
株価が大きく下落する中、貴重なコインの価格は逆に上昇し続けたことはよく知られた事実です。
上昇の理由の一つに、人々が安全資産を求めたことが考えられます。
通貨や株式と異なり、貴重な金貨は国家や企業等による信用の裏付けが不要で、存在自体に価値があります。
世の中が混乱すればするほど、貴重な金貨の価値に注目が集まるという流れです。
銀貨でも同じ現象が
金貨だけでなく銀貨でも、同じ現象が見られます。
特に貴重な銀貨の価格は金貨を上回ることがしばしばであり、とびぬけた希少性を持った人気コインは今後もコレクター垂涎の的であり続けるでしょう。
❖ お手頃な金貨の価格推移の特徴
アン女王の5ギニー金貨はとても貴重な金貨で、いつでも誰でも買えるわけではありません。
そこで、お手頃な金貨について、5ギニー金貨と比較しながら紹介します。
アン女王5ギニー金貨の価値
金貨の価値は2つに分解できます。金という素材の価格と、その他の価値です。
アン女王の5ギニー金貨は、金の重量と比べて流通価格がきわめて高く、その他の価値が大部分を占めています。
その他の価値とは、希少性・コインやイギリスの人気などです。
金価格が占める割合が小さいので、金相場の上下動の影響を受けづらいという特徴があります。
この特徴が特に生きるのは、金や株式等の暴落時です。
不況時の株価等は大幅に下落する一方で、人気は不況の影響を受けづらいと考えられます。
希少性の価値に至っては、低下せずに一方的に上昇します。
なお、その他の価値には物価上昇を含みます。
物価上昇率が高い場合、以前と同じものを買おうと思っても、より多くのお金を出さないと買えません。
お金の価値が低下していて、放置しておくとお金の価値がさらに目減りしてしまいます。
お金を持つくらいなら金貨を買って資産防衛したいという行動が、アンティークコインの価格上昇に一役買っています。
お手頃な金貨の価値
お手頃な金貨はその他の価値の割合が小さいので、流通価格は金の素材価格に近くなります。
すなわち、金相場の影響を受けやすくなります。
金価格に連動したコインを買いたい場合は、その他の価値が特に薄い金貨(地金型金貨)を選びましょう。
その他の価値が薄い分だけ、お手頃価格で購入可能です。
金相場の影響をどれだけ大きくしたいか、小さくしたいかにより、選ぶべきコインの種類が変わります。
価値の内訳の考察は、銀貨についても同様です。
❖貴重なコインが狙い目
金や株価の下落時に価格が下がりづらく、むしろ上昇さえするという動きは、現存枚数が少ない貴重なコインの特徴です。
資産防衛や価格上昇狙いでアンティークコインを購入したい場合は、人気のある貴重なコインを狙うとよさそうです。
なお、上の考察は過去の分析であって、将来の値動きは誰にもわかりません。
過去と将来で異なる値動きを示す可能性も捨てきれません。
自分の資産総額とコインに投入可能な金額のバランスを十分に考えて取り組みましょう。
今後、額面別(5ギニー・1ギニーなど)、5ポンド金貨、モダンコインなどの価格についても、時間の経過とともにどのように変化してきたのか紹介していく予定です。
金や株式と同じ尺度で測りきれない部分があるからこそ、長い時間をかけて評価されてきたのかもしれません。
次にコインを見るときは、今の価格だけでなく、どんな価値の積み重ねの上に成り立っているのかを、静かに想像してみるのも良さそうです。
数字とは別の視点が、ふと浮かんでくるかもしれません。