アンティークコインのグレードとは?コインの写真を使って解説
なんとなく重要そうだと感じつつも、国によって書き方が違ったりして、少し距離を感じてしまう方も多いかもしれません。
今回のコラムは、そんなグレードの考え方を、実際のコインを思い浮かべながら整理していく内容になっています。
読み進めるうちに、これまで曖昧だった違いが、少しずつ輪郭を持ってくるはずです。
アンティークコインのグレードとは、コインの品質表示です。
コインを正確に鑑定するには長年の経験が必要とされ、初心者が簡単に判断できるものではありません。
しかし、記号で書いてあれば、誰でも品質を把握できます。
グレードの表記方法は国ごとに異なるので、実際のコイン画像を使いつつ、一部の主要国について表記方法を紹介します。
❖日本やイギリスのグレード
グレードの表記でしばしば見かけるのは、日英米の方法です。
最初に日英について紹介した後、米国などを概観します。
なお、各グレードのコイン画像の例として、米国の銀貨「モルガンダラー」を使用しています。
最高グレードと低グレードの差は初心者でもわかりますが、グレードが近いと差がよくわからないでしょう。
コインの現物を数多く見ることによって、差が徐々にわかるようになります。
FDC(完全未使用)


FDC(完全未使用)のモルガンダラー (画像出典:日本コインオークション)
完全未使用とは、未使用の中でも特に傷が少ないものを指します。
とてもきれいな状態ですが、傷一つないという意味ではありません。
現代の技術で新規発行される金貨や銀貨は、製造技術が素晴らしくとても美しいです。
近代以前のコインは製造方法が現代ほど高度でなく、また、保存中にわずかであっても傷がつくものです。
このため、FDCは主にモダンコイン(現代のコイン)に対する評価として使用されます。
現代よりも前のコインでFDCが付与される場合、それはとても貴重です。
なお、FDCとはフランス語「Fleur de coin」の略です。
UNC(未使用)


UNC(未使用)のモルガンダラー (画像出典:日本コインオークション)
UNC(Uncirculated)とは、世の中に流通した痕跡がないコインを指します。
造幣局での製造過程や保管中に傷がついた場合、その傷は流通前のものなのでUNCの評価に変わりはありません。
このため、UNCでも顔の部分に大きな傷があったり、コイン全体に傷があったりします。
また、長期間の保管を経ている場合、自然に変色している場合があります。
変色していても、流通の跡がなければUNCです。
一般的な感覚の未使用とコインの世界の未使用は意味が異なるので注意が必要です。

造幣所内でまとめて保管されていた、流通前のハーフペニー(画像出典:(株)ダルマ)。
上のビニル袋のコインは、イギリスのハーフペニーです。
製造後のコインは袋にまとめて保管され、造幣所内での移動のたびごとにコイン同士がぶつかり合って傷がつきます。
しかし、流通前の段階の傷なので、どれだけ傷がついても未使用の判定になります。
流通前の傷なのか、それとも流通後についた傷なのか。
コインのプロはこれを判定できます。
AU(準未使用)


AU(準未使用)のモルガンダラー (画像出典:日本コインオークション)
準未使用(Almost uncirculated)とは、世の中に流通したものの流通過程でついた傷がとても少ないコインです。
未使用状態に近いものを指します。
EF(極美品)


EF(極美品)のモルガンダラー (画像出典:日本コインオークション)
極美品(Extremely fine)は世の中に流通したコインで、摩耗や傷が比較的少なく、デザインがはっきりと判別できるものを指します。
EFでもAUでもデザインがはっきりわかるものの、数多くのコインを比べることで差が理解できるようになります。
VF(美品)


VF(美品)のモルガンダラー (画像出典:日本コインオークション)
VF(Very fine)とは、EFに比べて摩耗が進んだ状態です。
デザインに不明確な部分がある一方、デザインを十分に判別できるという意味です。
F(並品)


F(並品)のモルガンダラー (画像出典:日本コインオークション)
F(Fine)とは、中程度の摩耗があるものの主要な部分がまだ残っている状態です。
髪の毛や衣服の模様などが部分的に確認でき、文字や日付もはっきり読めます。
VG(劣品)


VG(劣品)のモルガンダラー (画像出典:日本コインオークション)
VG(劣品)とは、デザインの主要部分は判別可能ながら、摩耗が大幅に進んだ状態です。
細部の線や模様はほとんど消えており、輪郭が滑らかです。
上の写真を見ても、女性の髪やハクトウワシの羽の細部は流通の過程で削られていることがわかります。
備考
さらに下位のグレードとしてGood・Fair・Poorの3種類があるものの、これらはコレクションの対象にはなりづらいです。
コインがどこまで摩耗するとPoorになるのか調べてみると、面白いかもしれません。
なお、各グレードに+や-がつく場合があります。
EF- :EFと比べてやや低品質だがVFほどではない
FDCを除く各グレードに+と-があるので、実際のグレードの種類は数多くあります。
❖その他欧米諸国のグレード
グレードには世界統一基準がなく、各国で独自の方式が定められています。
このため、英国式と欧州大陸諸国を比較すると、英国式のVFとEFの間がドイツのSS+という具合で、どこでグレードを切り分けるかという基準も異なります。
米国では鑑定会社のNGCやPCGSが数字を使っており、スラブ(プラスチックケース)の普及とともに日本でも広く知られるようになりました。
注意点として、FDCが挙げられます。
フランスでFDCとは未使用の意味で、イギリスでFDCは完全未使用です。
日本でFDCと言えば完全未使用という理解で問題ない一方、何らかの理由でフランス式のグレードに接する場面がある場合、注意を要します。
| 米国(NGC) | 英国 |
| 60 ~ 70 | UNC |
| 50 ~ 58 | AU |
| 40 ~ 45 | EF |
| 20 ~ 35 | VF |
| 12 ~ 15 | F |
| 8 ~ 10 | VG |
(データ引用元:NGC)
| イタリア | フランス | ドイツ | 英国 |
| AC(sin circular) | FDC | STGL | UNC |
| EBC | SUP | VORZ | AU |
| MBC | TTB | SS+ | VF / EF |
| BC+ | TB | S+ | F / VF |
| BC | B | Sehr Gut | VG / F |
(データ引用元:Monnaies Francaises)
❖ Proof(プルーフ)
プルーフとは、流通目的でなく贈答用など特別な目的で作られたコインです。
金貨や銀貨の元となる金属板をピカピカに磨き、プルーフ専用の刻印を使って製造します。
製造時だけでなく、生産後も傷がつかないように丁寧に扱われるので、発行時の傷はほぼありません。
流通用貨幣とプルーフが同時に発行される場合、プルーフの発行枚数は桁違いに少なく、取引価格は高騰します。
Prooflike(プルーフライク)


Prooflike(プルーフライク)のモルガンダラー (画像出典:日本コインオークション)
流通用のコインであっても、製造開始初期にはプルーフのような輝きを持つコインが作られることがあります。
これをプルーフライクと呼びます。
通常のコインに比べて枚数が少なく、高値がつく傾向にあります。
❖グレードと価格の関係
グレードと価格の関係については、グレードが高ければ高いほど価格も高いという関係が成り立ちます。
ただし、存在自体が珍しいという場合、低グレードでも高値がつく場合があります。
あまりにありふれている場合は、70でもそこそこの価格にとどまります。
コインを買う際には、グレードだけでなく、現存枚数等にも注意しましょう。
同じ「未使用」や「美品」という言葉でも、背景を知ることで見え方が変わってくるのが印象的でした。
次にコインを見るときは、数字やアルファベットの奥にある経緯にも、そっと目を向けてみたくなりそうです。
そうすると、これまでとは少し違った距離感で、コインと向き合えるかもしれません。