アンティークコインはこうして蘇る!発見事例とおすすめ博物館まとめ

アンティークコインはこうして蘇る!発見事例とおすすめ博物館まとめ

 

スタッフのひとことナビ
S.Mori(コイン歴3年)

今回は、アンティークコインが「どこから見つかるのか」という視点から、その長い旅路をたどっていくコラムなんですね。
コインというと、どうしてもコレクションとして完成された姿に目が向きますが、その前には土の中や海の底、古い修道院など、さまざまな場所で眠っていた時間があります。

発見のエピソードを読んでいくと、一枚のコインが現代に届くまでの偶然や歴史の積み重なりに、不思議なロマンを感じますね。
博物館の紹介も含めて、ゆっくり旅をするような気分で楽しめそうな内容です。

 

 

アンティークコインを手にしたとき、あるいは目にしたとき、ふとこんなことを思ったりはしませんか?

「このコインはいったい、どこからやって来たのだろう?」

世紀を超えて伝わるコインには、鑑定書には書かれていない歴史があります。
発見現場は、遺跡の発掘現場、工事現場、難破した船の中、農地などさまざま。近年もさまざまな場所から、数多くのコインが発見されています。

アンティークコインはどのように発見されるのか。いくつかの例をたどりながら、膨大なコレクションを鑑賞できる美術館・博物館もあわせてご紹介します。

 

(画像出典:Adobe Stock

 

 

コインはどこで発見されるのか?主要な5つの場所

古代から中世にかけて発行された貨幣は、さまざまな場所から発見されます。主な5つの発見場所について解説します。

 

ストックホルムのヴァイキング美術館にある貨幣。重さ重視のため貨幣を割って使うこともあったそうです(撮影:PRIME MINT)。

 

 

1.工事現場

遺跡を発掘する意図がなくても、地下を掘るとさまざまな遺物が登場するヨーロッパの古い都市。道路の舗装や修復、あるいは地下鉄の敷設中にコインが発見されることは珍しくありません。

近年、イタリアのローマでは「博物館駅」が注目を集めています。地下鉄C線の工事に伴って発見された歴史的遺物が、駅の構内に展示され、歴史に興味がない人びとの注目も浴びることに。

コロッセオの周辺には兵舎があったため、兵士たちが使っていたコインが大量に見つかっています。またコロッセオの地下にある排水溝からも、観客が落としたと思われるコインが見つかり話題になりました。

 

ローマのサン・ジョヴァンニ駅構内には、駅の建築中に発見された貨幣が展示されています(撮影:PRIME MINT)。

 

 

2.宗教施設

古代の神殿や宗教施設は、貨幣が眠る場所として世界各地で確認されています。

日本で神社の賽銭箱にお金を納めるように、西洋でも神に誓いを立て、願いが叶った際にお礼として貴重品を奉納する「ex-voto(エクス・ヴォート)」と呼ばれる慣習が古くから根付いていました。古代ギリシャ・ローマ時代には、神殿の祭壇やご神体の足元に貨幣を置いたり、神聖な泉に投げ入れたりすることが広く行われていたようです。

この奉納の文化は多神教の時代に特に盛んでしたが、中世キリスト教時代にも聖人の聖堂への奉納として引き継がれており、時代を超えて宗教施設がコインの宝庫になってきた背景があります。

 

 

3.海底や水域周辺

海や川の底もまた、コインが眠る場所として知られています。

古代から中世にかけて、商船は大量の貨幣を積んで航行していました。嵐や戦闘によって沈没した船の積み荷から、貨幣が見つかることがよくあります。

たとえば、2023年にはイタリア・サルデーニャ島沖で、大量のローマ貨幣が発見されました。地元ダイバーの通報をきっかけに見つかったローマ時代の銅貨は、3万~5万枚にのぼるとみられています。

水とコインの縁は難破船だけではありません。
古来より泉や川は神聖視され、祈りを込めて貨幣を投じる習慣が各地にありました。ローマ帝国時代のブリタニア(現在の英国北部)にあったコヴェンティナの泉では、巡礼者が捧げたローマ貨幣が泥の中に沈み、後の発掘で大量に出土しています。

さらに古代ギリシャ・ローマには、死者が冥界の川を渡る渡し賃と貨幣を埋葬品とする「カロンのオボロス」という習慣がありました。水は金属を腐食させる一方、酸素を遮断した泥や砂が保存環境となることも。水域で発見されたコインは、こうした理由から高品質のものが多数あります。

 

 

4.農地などの自然環境

農地で作業中、トラクターの刃の先がコツンと何かに当たる。掘り起こした先には、大量のコインがあった!

そんな光景は、ヨーロッパでは珍しくありません。昔の人が壺に詰めて土中に埋めた貨幣が、忘れ去られたり、埋めた本人が亡くなったりなどして、何百年も放置されていたというケースです。

フランスのブドウ畑、スイスのサクランボ農園、イタリアのコモ湖周辺の農地からも、良質な金貨が発見されニュースになりました

 

(画像出典:Adobe Stock

 

 

5.修道院・城・古い建築物

古い修道院、城、宮殿もまた、アンティークコインの発見場所として知られています。
フランスのサン=ヴァンドリユ修道院、フランスのクリュニー修道院、スイスのミュスタイア修道院など、修復や調査の過程でコインが見つかる例は枚挙にいとまがありません。

また、スペインのポンフェラーダ城、イタリアのカノッサ城、スイスのシヨン城でも、大量の貨幣が見つかりました。

修道院や城、宮殿は、富裕層が住む場所。隠し財産や不測の事態に備えたお金であった可能性が高いとされています。

 

イタリアのトレンティーノ=アルト・アディジェにあるブオンコンシッリョ城。城内には充実したコインコレクションがあります(撮影:PRIME MINT)。

 

 

近年におけるコイン発見のニュース

毎年どのくらいのアンティークコインが発見されているのか、統計的なデータはありません。しかし、ここ数年でもかなりの数のコインが発見されてニュースになっています。
いくつかのニュースをご紹介します。

 

ローマ国立博物館にあるコインコレクションの一部。ローマの北にあるサンタ・マリネッラで、共和政ローマ時代のコインが発見されたときの状態を再現しています(撮影:PRIME MINT)。

 

 

オランダのブンニク近郊でアウレウス金貨やデナリウス銀貨を発見(2023年)

オランダのユトレヒト近郊ブンニクは、かつては広大なローマ帝国の北の境界線でした。2023年、ブンニクの野原から金属探知機によって400枚におよぶアウレウス金貨とデナリウス銀貨を発見。

場所柄、国境を守る兵士たちの給与として使われたコインではないかといわれており、歴史ファンたちを興奮させました。

 

 

ブルガリアのプロブディフで500枚以上のコイン発見(2024年)

ブルガリア中南部の古都プロブディフ。紀元前4世紀にマケドニア王フィリッポス2世が礎を築き、後にローマ帝国が「トリモンティウム(三つの丘の街)」として繁栄させたこの地で、2024年8月、驚くべき発掘成果が報告されました。

古代ローマの「東門」に隣接する区域から姿を現したのは、時代を異にする500枚以上の貨幣群。特筆すべきは、ここが単なる遺跡ではなく、かつて商人が行き交い、職人が腕を競った「商業の中心地」であったことです。

見つかったコインの多くは日常的に使われていた青銅貨ですが、装飾品の材料となる金の延べ棒(インゴット)も含まれており、当時の都市が持っていた莫大な富と活気を今に伝えています。

 

 

チェコでカール大帝のデナリウス銀貨発見(2024年)

2024年8月、チェコのティシツェでカール大帝時代のデナリウス銀貨が発見されました。

8世紀末〜9世紀初頭にフランスのメッレで造られた稀少な1枚とされており、当時のフランク王国の版図外で見つかった点が注目されています。

コイン1枚という単独での発見は、埋蔵ではなく当時の旅人が移動中に紛失した可能性もあるのだとか。西欧と東欧の間に、想像以上の経済交流があったことが推察されます。

 

 

1世紀も行方不明!5,000枚以上のコレクションの存在が明らかに(2024年)

こちらは少し特異な例。「エルペレの宝物」と呼ばれ、今後の研究や発見が注目されている事例になります。

1921年、当時はイタリア領だったエルペレ(現在はスロベニア領)で、ある鉄道員が偶然、5,000枚以上の中世後期の金貨や銀貨を発見しました。ところが発見直後、この膨大なコレクションの行方が不明になりました。その後1世紀もの間、発見されたという事実やコレクションの存在すら忘れ去られていました。

2024年、トリエステ大学の研究員によって、1921年当時の発見が再び脚光を浴びることに。未公開資料や古文書等、現地の人たちの口承記録によれば、5,000枚のコインは中欧、東欧、アルプス地域、バルカン半島など広域にわたる発行のものばかりだったそうです。
そのため、中世の盗賊団が数年にわたって略奪したコインの集積であった可能性が示唆されています。

現在は全コレクションの3分の1に当たる1,773枚が、トリエステのヴィンケルマン古代博物館に保管されています。残りのコインは今もどこかに隠されていると考えられており、「エルペレの宝物」の謎はまだ完全には解き明かされていません。

 

 

コインをまとめて鑑賞できる世界の博物館

ヨーロッパの美術館や博物館の多くには、コインコレクションのコーナーがあります。なかでも有名なコインコレクションを所有する美術館や博物館をご紹介します。

 

(画像出典:Adobe Stock

 

 

大英博物館

アンティークコインの世界に踏み出したばかりの初心者にもおすすめなのが、大英博物館です。世界でも有数の規模を誇るコインコレクションをもち、所蔵数はおよそ80万点。物語性を重視した展示によって、歴史に詳しくない人でも理解しやすい構成になっています。

ヨーロッパ、アジア、中東など世界各地の貨幣史を網羅し、紀元前7世紀から現代までのコインの歴史を一望できるのが魅力です。

 

 

フランス国立図書館

14世紀の王室図書館に起源をもつフランス国立図書館は、数十万点におよぶコインコレクションで知られています。

学術研究機関としての性格が強く、コインと文献資料を体系的に結びつけて管理している点が最大の特徴です。展示よりも分類・保存・研究に重点を置き、図書館ならではの高いアーカイブ性によって、資料の学術利用がしやすい環境が整っています。

アンティークコインに関する造詣を深めたい方におすすめです。

 

 

ベルリン・ボーデ博物館(ムンツカビネット)

ベルリンのムンツカビネットは、ベルリン国立博物館群を構成する専門部門。主要なコインコレクションは、ボーデ博物館で展示されています。

古代ギリシャ・ローマから中世、近代、アジア・イスラム世界までを網羅する約50万点のコレクションを誇り、研究と一般展示の両面で国際的に高く評価されています。学術性と展示性のバランスがよく、とくにドイツ語圏の貨幣研究の中心として知られています。

ハプスブルク家や神聖ローマ帝国が好きな方におすすめです。

 

 

最後に

手に取ったコインは、ひょっとしたら古代ローマの兵士が給与として受け取ったものかもしれません。あるいは、中世ヨーロッパを旅した人が道中で落とした一枚だった可能性もあります。

アンティークコインは、発行された時代の人々の手を渡り、紆余曲折の末に現代へとたどり着いた「歴史の旅人」。

小さな一枚に宿る物語に思いを馳せながら、その深い時間の流れをぜひ感じてみてください。

 

 

スタッフのひとことコメント
Mina Yoshii(コイン歴2年)

コインは「集めるもの」という印象が強かったのですが、今回のコラムを読むと、むしろ「発見され続けている歴史」なのだと感じさせられますね。
農地や海底、修道院の壁の奥など、思いもよらない場所から何百年ぶりに姿を現す様子を想像すると、それだけで物語のようです。

特に印象的だったのは、コイン一枚から当時の交易や戦争、人々の移動まで見えてくるところでした。
誰かが落とした一枚、隠したまま戻れなかった一枚——そんな背景を想像すると、アンティークコインの見え方も少し変わってきます。

次にコインを手に取るときは、「この一枚はどこで眠っていたのだろう」と、つい考えてしまいそうですね。

 

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