ナポレオン1世の金貨が欲しい?それともナポレオン3世?
今回は、「ナポレオン金貨」と呼ばれるコインが、実は1種類ではないというところから始まるコラムなんですね。
ナポレオンと聞くと、多くの人はナポレオン1世を思い浮かべますが、コインの世界では少し違った意味で使われているのが興味深いところでした。
同じ“ナポレオン”の名を持つコインでも、時代や人物によって雰囲気はかなり異なりますし、金貨だけでなく銀貨やメダルまで視野を広げると、楽しみ方もぐっと広がっていきます。
歴史上の人物を「肖像」として眺めるだけでなく、実際に当時流通していた貨幣として触れてみる感覚も、どこか特別な魅力がありますね。
そんな視点で、気軽に読み進めてみてください。

ダヴィッド『サン=ベルナール峠を越えるボナパルト』(画像出典:Wikipedia)
ナポレオンと言えば、多くの人はナポレオン・ボナパルト(ナポレオン1世)を思い浮かべるでしょう。
上の絵は特に有名で、何度も見たことがあるという人も少なくないはず。
歴史上の軍人・政治家について日本で人気アンケートを取れば、間違いなく上位に入るでしょう。
そんなナポレオンにまつわるものを手に入れたいと思えば、金貨や銀貨が最もおすすめです。
購入資金は必要ですが、当時のフランスで実際に流通した貨幣(コイン)ですから、現代のお土産とは格が違います。
ここで、重要な注意点があります。
ナポレオン金貨という場合、一般的にはナポレオン1世でなくナポレオン3世の金貨を指すので要注意です。
ナポレオン1世の金貨をご希望の場合、ナポレオン1世と3世で混乱が起きないように気を付けてください。
❖ナポレオン1世の金貨

1813年-A フランス ナポレオン1世 パリ造幣所 20フラン金貨(画像:PRIME MINT)

1813年-A フランス ナポレオン1世 パリ造幣所 20フラン金貨 デザイン図(画像作成:PRIME MINT)
ナポレオン・ボナパルト(ナポレオン1世)の金貨は2種類あり、20フランと40フランです。
数多く発行された一方、流通貨幣として製造されたので未使用品以上のグレードを探すのはやや大変という特徴があります。
コレクターとしてコインを探すなら高グレードのコインが欲しくなるところですが、そこそこのグレードの金貨も見逃せません。
グレードがそこそこということは、ある程度摩耗しているという意味なので…
- 混沌とした当時のフランス社会を生き抜いたことを示す
- 高グレード品に比べてお手頃価格
- 高グレード品を狙いつつ、そこそこの裸コインも買って自由に触るのもOK
3つ目が意外に狙い目です。
スラブに入った金貨を買ったら、取り出して金貨を直接触りたいとは思わないでしょう。
でも、触りたいと思いませんか?
ナポレオン1世の金貨は発行枚数が多いので、比較的お手頃価格なのが魅力の一つです。
2枚買って、そのうちの1枚はあえて裸コイン(スラブ入りでないコイン)にすることで、自由に触れられるようにするというのは良い案です。
なお、コレクターの中には、スラブ入りコインよりも裸コインの方が好きだという人もいます。
スラブ入りの金貨はとても軽く感じますが、裸コインはずっしりとした重量感とひんやりとした肌触りがあります。
スラブでは得られない感触です。
同等のグレードなら裸コインの方が安いというのも、見逃せない魅力です。
大別して3種類
ナポレオン・ボナパルト(ナポレオン1世)の金貨を大きく3つに分けると、以下の通りです。
- 第1執政時代(ナポレオン・ボナパルト)の金貨
- ナポレオン1世時代の金貨
- 1815年の金貨
ナポレオンはいきなり皇帝となって金貨を発行したのではなく、武功を挙げて地位を徐々に高めました。
皇帝になる前に第1執政に就任しており、この時代にも金貨を発行しています。
執政は3人いたのにナポレオン・ボナパルトだけが金貨に大きく描かれていることから、この時点で既に独裁的な権力を得ていたことがわかります。
その後、ナポレオンは国民投票を経て1804年に皇帝となりました(ナポレオン1世)。
皇帝に即位した後も快進撃が続き、20フラン金貨や40フラン金貨を多数発行しています。
1815年の金貨はナポレオン1世時代の発行ですが、1814年までの金貨とは別物です。
1814年に戦いに敗れて島流しに処されたナポレオン1世は、島から脱出して1815年に再び皇帝の地位に返り咲きます。
しかし、3か月ほど後の戦いで再び敗れてしまい、政治の表舞台から完全に身を引くことになりました。
皇帝復帰から退位までわずか100日ほどしかなく、100日天下とも呼ばれ、1815年の高グレード金貨は貴重な逸品です。
上の3種類のうち、最も手に入れやすいのは2番目のナポレオン1世時代の20フラン金貨です。
手軽さを求めるなら5フラン銀貨がおすすめ
もっとお手頃価格で、入手難易度も良い感じで、しかも高グレード品が欲しいという場合、銀貨がおすすめです。
銀貨は金貨より安く、大きいのが魅力です。
高グレード品も比較的入手しやすく、ナポレオン1世のコインが欲しいなら狙ってみたいところでしょう。
金貨と同様に、ミントマーク(造幣局の固有記号)・年号・グレードによって価格差が大きく、納得の逸品を見つける過程を楽しむこともできます。

1813年L フランス ナポレオン1世 5フラン銀貨(画像出典:日本コインオークション)
記念メダルという選択肢も
コインでなくメダルを狙うという選択肢もあります。
コインは通貨であるのに対して、メダルは記念品として製造されました。
ナポレオン1世はさまざまな戦争に勝利し、勝利を記念して数多くのメダルを発行しています。
上の銀メダルは、1813年のバウツェンの戦いでロシア・プロイセン連合軍に勝利し、その記念碑の建立を命じたことを記念したものです。
戦勝を記念する建造物を記念するために銀メダルを作ったという、記念に記念を重ねているのが興味深いところです。
なお、その後のフランス軍の劣勢により、記念碑は当初の計画通りに完成しませんでした。
このメダルのグレードはVFでスラブに入っておらず、安価なので直接触って銀の感触を確かめるのにちょうど良いでしょう。

1813年 フランス ナポレオン1世 セニス山の記念碑建設 銀メダル(画像:PRIME MINT)
征服した国々でもコインを発行
ナポレオンは戦争での勝利を受けて、各地に衛星国家を樹立しました。
衛星国家でも、ナポレオン関連のコインが発行されているので紹介しましょう。

1807年 オランダ ユトレヒト 小文字年号(Small Date) 1ダカット金貨(画像:PRIME MINT)
上の金貨はフランスに征服されたオランダ王国で発行されており、当時の王はナポレオンの弟ルイ・ナポレオンでした。
しかし、ナポレオン1世と異なり、上の金貨にはルイ・ナポレオンの肖像が刻印されていません。
オランダのダカット金貨は貿易決済用通貨として欧州各国で広く流通しており、デザイン変更による混乱を避けるためだったと考えられます。
❖ナポレオン3世の金貨

1869年-BB フランス ナポレオン3世 ストラスブール造幣所 20フラン金貨 Gad-1062 F-532(画像:PRIME MINT)
ナポレオン金貨という場合、一般的にはナポレオン3世が発行した金貨を指します。
さまざまな額面で製造されており、20フランは求めやすい種類の1つです。
ナポレオン1世の治世で金貨が数多く発行されましたが、ナポレオン3世の時代にはさらに1桁多い枚数が発行されました。
当時のヨーロッパ大陸でフランスの国力は絶大であり、金貨の発行枚数にフランスの大国ぶりが表現されています。
20フランは1859年に2,500万枚以上が製造され、高グレード品の入手も比較的容易なのがうれしい点です。
なお、ナポレオン3世の20フラン金貨の規格は、ナポレオン1世の20フラン金貨と同じです。
直径:21 mm
品位(金の純度):90 %
ナポレオン1世と3世の20フラン金貨を並べて比べてみるのも面白いでしょう。
あるいは、すべての額面を揃えるというコレクションの方法もよさそうです。
100フラン金貨

1869年-BB フランス ナポレオン3世 ストラスブール造幣所 100フラン金貨 Gad-1136 F-551(画像:PRIME MINT)
ナポレオン3世の100フラン金貨は20フラン金貨に比べて発行枚数が少なく、高グレード品は貴重品として高額で取引されます。
最も製造枚数が多い1857年でも、10万枚ほどにとどまります。
1万枚に満たないという年も珍しくありません。
上の100フラン金貨は1869年にストラスブールで発行され、発行枚数は12,000枚ほどです。
鑑定会社のPCGS社からMS62の評価を得ています。
直径:35 mm
品位(金の純度):90 %
スペックを見ると、20フランに比べて圧倒的に大きく、重いことがわかります。
❖ナポレオン2世はいるの?
ナポレオン1世と3世がいるなら、2世は存在したのか?が気になるところです。
ナポレオン2世はナポレオン1世の息子で病弱だったと伝えられており、フランスを実質的に統治することなく21歳で生涯を終えました。
ナポレオン3世はナポレオン1世の甥であり、ナポレオン1世の直系ではありません。
2026年現在、ナポレオン8世がその血統と歴史を現代に伝えています。
ナポレオン関連のコインというと、どこか特別で手が届きにくい印象もありましたが、読み進めるうちに、意外といろいろな楽しみ方があることに気づかされました。
高グレードの金貨を眺める魅力もありますし、あえて少し摩耗した裸コインを手に取って、時代の空気を感じてみるという楽しみ方も面白そうですね。
特に印象的だったのは、ナポレオン1世と3世のコインを並べて比較する視点でした。
同じ名前を持ちながらも、時代背景や国の勢いまで違って見えてくるのは、アンティークコインならではの奥深さかもしれません。
次にナポレオンのコインを見るときは、「どのナポレオンなのか」を意識するだけでも、また少し違った見え方になりそうですね。